メタバースとWeb3.0が地域を変える

  • 2022年3月15日
  • 2022年3月27日
  • コラム
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新たな地域政策の目標はデジタル居住人口の拡大

デジタル先進国として注目されているバルト海に面した小国エストニアでは、外国人にも政府が発行するデジタルIDと各種電子サービスへのアクセス権を付与する「e-Residency(電子居住権)」の仕組みを展開し、国民と同様のさまざまな電子公共サービスを世界に向けて開放しています。このため、世界中の誰もがオンラインでエストニアでの企業を設立することが可能で、日本に住んでいながらエストニアの属するEU圏内での事業展開が可能となっています。

この仕組みにより、世界各国の先進的企業家がエストニアのビジネスに参画し、エストニアへの投資を行い、人口132万人の地域経済の発展に大きく寄与しています。

この事例を日本の地域政策に応用できないでしょうか。我が国の地域政策は1977に策定された三全総以来、定住人口(居住人口)の拡大を目指してきましたが、最近では地域を訪れたり滞在する「交流人口」、さらには地域課題の解決などに何らかの形でプレイヤーとして関与する「関係人口」の拡大という目標が示されるようになってきました。このエストニアの事例はデジタル技術を活用して関係人口を拡大する取り組みということができるでしょう。このエストニアのモデルに学び、これからは地域政策の新たな目標として「デジタル居住者人口の拡大」を掲げる時代に来ているのではないかと考えます。

 すなわち定住やリアルの交流、地域への関与だけでなく、デジタルのネットワークを通じた地域課題の解決やプロジェクトへの事業参加、投資、コンテンツやソフトウェア、デジタルサービスの提供、地域産品の購入等デジタル居住者としての地域への関与が地域経済を活性化させる時代が到来しています。

すでにわが国でもその動きが生まれています。自治体そのものではありませんが、新潟県長岡市の旧山古志村の山古志住民会議では2021年12月、錦鯉の英名「Colored Carp」と名付けたNFTのデジタルアート作品を電子住民票を兼ねて発行しています。購入者から事業プランを集めてネット上で議論を行い、電子投票を経てNFT販売で得た資金により事業化を行うなど、まさに電子居住者の仕組みがここでは実現しています。

メタバースとWeb3.0

このデジタル居住者の仕組みを最近よく聞かれる言葉である「メタバース」を利用して実現しようというのがこの地域メタバースのプロジェクトです。メタバースとはいろいろな概念が錯綜していますが、デジタル上の2D又は3D空間にアバターなどを介して参加、情報発信、情報交流等の活動を可能とするシステムとして位置付けたいと思います。

メタバースはこれまで20年にわたって「Second Life」「フォートナイト」「マインクラフト」といったマルチプレイ可能なソーシャルゲームを中心に静かに展開されてきましたが、最近における情報通信技術の進展、特にXR(VR・AR・MR)技術によるコミュニケーションレベルの高度化とブロックチェーン技術を活用した仮想通貨、NFTの出現はメタバースに新たな進化をもたらし、従来のゲームの新しい進化とともに、コロナ禍における新たなコミュニケーション手段として、イベントやビジネスへの多様な活用が広がりつつあります。このことが最近メタバースという言葉が様々な形で取り上げれるに至った理由です。

一方、最近メタバース同様に使われえるようになった言葉として「Web3.0」があります。インターネットの進化は、いわゆるWeb2.0といわれるように、facebook、twitter、Instagramの等のSNS、YouTubeにおける参加者が自らメッセージ、写真、動画を発信するというかたちで進化し、情報の相互受発信可能な新しいコミュニティを作り上げてきました。メタバースはそのコミュニケーションのレベルを2次元、3次元のバーチャル空間において飛躍的に高め、没入感、臨場感のあるリアルタイムでの参加を可能とするものです。それとは別にブロックチェーンという技術の出現は、本来自律分散型の仕組みであるインターネットの世界を結果的にGAFAMというプラットフォーマ―による中央集権的な管理にゆだねる結果を招きました。

この現実を、ブロックチェーンをベースとした分散型台帳技術は、インターネットを完全な形で分散型ネットワークであるP2P(ピアツーピア)の仕組みに変えつつあります。ブロックチェーンはインターネット上の取引データ等を改ざんや不正使用のない形で分散型台帳に記録する仕組みであり、中央集権的な管理者が存在しないため、国境制限はなく、セキュリティにも強く、個人情報も自らの管理権限により適切に管理されます。山古志のNFTをはじめ、暗号資産(仮想通貨)、DAO(自律分散型組織)などこれらブロックチェーンをベースにした新しい分散型のインタネットの仕組みがWeb3.0(Web3)と言われています。

デジタル居住者からメタバース居住者へ

従来のエストニアモデルのデジタル居住者ですが、メタバースの出現により、よりリアルの居住者により近い形で、地域に関与することが可能となります。すなわちメタバースの居住者となることにより。メタバース空間でオフィスを構え、地域住民を雇用して事業を起こしたり、メタバース不動産を購入して住居やオフィスを整備したり、店舗を設けて販売を行ったり、教室を作って教育を行ったり、バーチャル市役所やオフィスに勤務して、自治体の政策形成や事業に参加するなど、様々な地域の経済活動をリアルに近い形でリアルタイムのコミュニケーションを通じて関与することが可能となります。

自治体の行政サービスはリアルとデジタルが融合し、登録されたデジタル居住者にもメタバース空間で行政サービスを提供することが可能になります。医療(メタバース空間で完結させるためには法律改正が必要)、フィットネス等の健康・医療、教育、イベントへの参加、美術館・博物館等文化事業への参加等のバーチャル空間による行政サービスの提供です。

一方、Web3.0の活用はメタバース居住者の仕組みをサポートします。メタバース居住者になるために、エストニアの電子居住者をモデルにデジタル居住者として登録が必要ですが、NFT化されたデジタル居住権の購入やふるさと納税の返礼品としてのNFTにより登録、電子地域仮想通貨の購入・利用、不動産購入等のブロックチェーン技術を活用した取引を通じて世界各地から地域の経済活動に参画することが可能となります。

このようにメタバースとWeb3.0の出現により、デジタル居住者の仕組みは、地域メタバースの仕組みに転換することに、リアルの世界に近いかたちでデジタル居住者が地域に関与することが可能となり、地域経済の活性化、地域課題の解決などに向けて新たな進化をとげることになります。

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